ともえのイタリア旅行(2003年夏)…第5日目
パドヴァとヴェネチア


前夜遅くなったけれど、朝はがんばって早めに起きて買い置きのデニッシュなどですませ、一路パドヴァへ。
また引き返す形で山地を越えてボローニャへ出、北上すると、道路が空いていたせいもあって約2時間でパドヴァに着きました。
ちょうどお昼になったので、他加子さんとフランコさんのマッサーロ家でパスタやサラダのお昼を頂きました。他加子さんはお料理もとても上手で、しかも手早いので感心しました。麦茶を出してくれて感激。お水もいろいろ飲ませてもらいましたが、やはり炭酸入りのはちょっと飲みにくいです。比較的炭酸量の少ないウリヴェーロというお水だったのですが、それでも慣れないと難しいです。フィウッジという無炭酸のお水は腎臓系の疾患を持つ人にはお薬代わりにも飲めるお水だそうで、夏の暑いときは循環器に負担がかかりやすいので良いです。しかも比較的飲みやすいお味です。一番日本人に合いそうなのはパンナという無炭酸のマイルドなお水。赤ちゃんにもOKです。
オペラ歌手がキッチンに立ってたりお洗濯物干してる図が、なんだかとても不思議。だって、昨日彼女の舞台を見てきたばかりなので、私の頭の中では蝶々夫人がお鍋かき混ぜてるような感じですもの。我らのディーヴァは洗濯籠を持って「ヨッコラショ」なんて言ってるのです。(^^;)

一休みしてからパドヴァのスクロヴェーニ礼拝堂へ。これは静かな公園の中にあります。
ここはジョットの壁画が有名で、14世紀初頭のフレスコ画です。予約しておいてもらったので、指定の時間に行くと、まず控え室のようなところでビデオを見ながら15分ほど待たされます。そのビデオ、字幕がドイツ語で、ジョットの生涯をいろいろな作品を通して紹介するという感じでした。この礼拝堂はちょうど補修作業が終わって、いたんでいた部分が直されたばかりだったそうですが、保存状態をできるだけ良好に保つために入場を予約によって制限しているのかなとも思いました。
中に入ると祭壇側で、向こうの端に礼拝堂入り口があります。まるで星空のような美しい濃青色のドーム天井の下に縦長の方形の礼拝堂が見渡せます。床は三菱マークをつらねたような模様の大理石で、両側の壁面には腰板に至るまで聖母マリアとキリストの物語が描かれています。ここの壁画はジョットの作品の中でも最高傑作と言われている物で、技法の完成だけでなく人物の表情が豊かで内面描写が優れています。特に「ユダの接吻」での表情の描き分けが印象に残りました。入り口側(つまり入った方からは奥)の壁面には「最後の審判」が壁いっぱいに描かれていて圧巻です。左に天国、右に地獄が描かれている、おなじみの絵です。やはり、じっと詳しく見てしまうのは地獄の部分です。(^^;;
パドヴァ大学は世界最古の天文台があるくらいで、大学を中心に落ち着いた学問の町ですが、このスクロヴェーニ礼拝堂もそんな天文学の歴史を天井画の星空の絵に表しているのかもしれません。天井のところどころに散らされた丸い絵がまるで惑星のように見えました。この礼拝堂は写真撮影ができないので、残念ながら写真はありません。
約15分の見学時間が終わって外へ出ると、真夏の太陽がまぶしく、容赦なく肌を焼いてくれます。気温は日なたでは40℃を超えているでしょう。まさに、これこそが地獄ではないかと思いたくなります。

そこから一旦、ヴェネチアのホテルへ向かいます。パドヴァからヴェネチアまでは小1時間。
途中、パドヴァのスーパーマーケットに寄ってちょっとお買い物。このスーパーはとても大きな敷地で、品揃えも豊富でした。特に、チーズ、ハム、パスタの種類の多さには圧倒されます。ハム売り場にはおじさんが陣取って大きなハムの塊から1枚づつ削ぎとって包んでくれます。お惣菜コーナーもあって、最近は中華料理のパックも出始めたとかで、実際、焼きそばや春巻き、から揚げ、野菜炒めなどたくさん並んでいました。驚くのは通路の広さです。日本ではカートがすれ違うのも大変な狭さが多いですが、このスーパーではみんなでメヌエットが踊れそう。いざという時、救急車のストレッチャーが通路で楽にすれ違えるくらいの広さです。
私はまたしてもデザートコーナーにひきつけられてしまい、直径15cmくらいの小ぶりのケーキを買い込みました。イタリアのスイーツはシンプルでナチュラルなものが多く、甘さも控えめで日本人にも食べやすいです。それにとても安いのです。(^^)
パスタコーナーではカッペリーニが本当に髪の毛のように細いのがあって、日本のスーパーでカッペリーニと言ってるのはまだまだ太すぎることもわかりました。
私の一番のお目当てはポレンタの粉。これは、日本のスーパーでは手に入りにくい物ですから。簡単に数分で作れるインスタント式の物と1時間くらいはかかる本式の物とがあります。また、黄色っぽいものと白いものとありますが、これはトウモロコシの種類の違いによるものらしく、帰ってから作ってみたら、白いポレンタの方が甘味が強いように思いました。お値段はいずれも小麦粉程度。(^^)

さて、いよいよヴェネチアへ向かい、ローマ広場で車を降ります。ここから先は車は一切使えません。運河を行く水上バスか水上タクシー、ゴンドラまたは徒歩だけです。ホテルはサンマルコ広場に近いダニエリなので、歩くと3,40分かかるし、荷物もあるので水上タクシーを使いました。これはいわゆるモーターボートですが、ダニエリまで約60ユーロとかなり高額になります。


  
       水上タクシーからの運河の眺め               サン・ジョルジョ・マッジョーレ教会(パッラーディオ作)


船尾に出て水面を渡る風に吹かれつつ途中の風景を楽しみながらホテル・ダニエリ近くに来ると、正面玄関脇の細い水路に入っていきます。ホテル専用の船着場が水路を入ってすぐのところにありました。まさに、ホテルに横付け。(^^)
フロントの向こうには広いラウンジがあって、静かな空間を提供しています。
ヴェネチアには元総督邸を改装したホテルが二つあって、このホテル・ダニエリは14世紀末の総督邸、グリッティ・パレスは16世紀の総督邸ですもう、ホテル全体が歴史的建造物で、まるで博物館のようです。シャンデリアひとつ取ってみてもアンティークのヴェネチアングラスですから・・・(^^;) イタリアのホテルのエレベーターは、ここに限らずどこでも痛風病みのおばあさんのような動きをします。


  
 ホテル・ダニエリ1階のラウンジ     

さて、ホテルに荷物を置いて、ヴェネチアの本土側にある友人のお宅へ。
最近、結婚されたばかりのテノールさんです。日本にも先のフィレンツェ歌劇場の『トゥーランドット』などで来日されています。彼は、大の日本ファン、映像マニアで、日本のイタオペ映像を高く評価してくれています。彼をブッファ役で知っていた私は、よく見ると意外とハンサムなのに驚きました。
瀟洒な3階建てのおうちに招き入れられ、さっそく彼のコレクションをいろいろ見せてもらいました。イタリアではたいていの個人のお宅にはエアコンはついていないのが普通なのですが、彼のおうちにはエアコンがありました。ただし、生活エリアの1、2階にではなく、3階のオーディオルームに・・・(^^;) 貴重なビデオが整然と収納されているのを見て、イタリア人には珍しい性格だなぁ、なんて思ってしまいました。人懐っこさはイタリア人そのものなのですが。
そうして映像を見たりおしゃべりしたりしているうちに、ヴァイオリニストでオケの音合わせに行ってらした奥様もご帰宅。みんなでダイニングに移動して彼のお手料理を頂きました。彼は料理も趣味で、シェフ顔負けのお料理を作ります。
前菜盛り合わせのあと、ヴェネチアの郷土料理の冷製パスタ。漁師さん達がお昼のお弁当に持っていくコクのあるパスタで、アンチョビとたっぷりの玉葱を使ったソースをからめて冷した物です。これが、暑い夏のお食事にはとてもおいしいのです。作るときはうんとたくさん(バケツいっぱいくらいあったような・・・)作って、残った分は冷蔵庫に入れて保存しておくのだそうです。これを40℃近い日中にエアコンのないキッチンで汗だくになって作ってくれたのです。うれしかった〜!
あと、生ハムとメロンの角切りとサラダ。生ハムもハンパな量じゃなくて、2枚のトレーにびっしり並べてあります。でもそれがあっという間になくなっていくのですからすごいですね。
デザートはケーキ。少しアーモンド粉の入ったジェノワーズのスポンジに、マスカルポーネチーズと卵黄と生クリームをあわせて混ぜたチーズ・アングレーズソースを上からたっぷりとかけます。これが、シンプルだけどとてもおいしくて、大きなピースをおかわりしてしまいました。(^^;)
ワイワイ言いながらたっぷり食べたあとで、また映像を見たりおしゃべりしたり。オペラの話になるといくら話しても話し足りるということがありません。彼の出演した今年のヴェローナでの『トゥーランドット』も見せてもらいました。フェニーチェ歌劇場の焼け跡から取ってきた燃え残りをビンに入れて保存しているのも見せてもらったのですが、すっかり炭化していて、火勢がどんなに強かったを示していました。フェニーチェ歌劇場の火事はオペラファンにとっても歌手にとっても悪夢のような事件でしたが、まもなく再建されてまた華麗なオペラハウスを見られそうです。


  
この奥が再建中のフェニーチェ歌劇場   フェニーチェ歌劇場の燃えさし


深夜まで楽しい時間を過ごしてからホテルに帰ると、衛星放送でヴェローナ野外劇場での『カルメン』をやっていて、またじっと見てしまいました。
これで、今年のヴェローナでの3演目を見たことになります。(^^)
イタリアでは自分が楽しむことの方に忙しくて、ネットにつないでもメールを見るのとボードのログを取るの以外はあまりたくさん書き込めず、覚書もそこそこにという毎日でした。


旅の目次に戻る   第6日目へ