ともえのイタリア旅行(2003年夏)…第4日目
フィレンツェとサン・ジミニャーノ


フィレンツェの2日目です。
この日は夜にサン・ジミニャーノまで岡崎他加子さんの『蝶々夫人』を見に行く予定なので、ゆっくり起きて午後いっぱい街をうろつきます。昨夜のレストランがおいしくて近かったので、ランチはまた13GOBBIで。お昼は午後1時からでパスタが中心です。主人は手打ちのパスタのジェノヴェーゼ(バジルペースト)、私はボンゴレ・ビアンコ。とても大きなアサリを使っていて香りが生きています。それに、気に入ってしまったブルスケッタをつけて。
このお店の名前は日本語に訳すと「13人のせむし男」という意味なのだそうです。じゃあ、ティト・ゴッビはせむし男という意味の姓なのですね?! まあ、知らなかった。リゴレットをやるのにぴったりだと思ってつけた芸名でしょうか?

ホテルで一休みしてから、帽子をかぶって昨日目をつけておいたお店を回ります。ショールやネクタイも色がとても良いものを買えて満足。ポンテヴェッキオでは金のネックレスも。イタリア語ができなくても買い物にはほとんど不自由しませんでした。付加価値税を返還してもらうために必ずお店で書類を作ってもらわなきゃいけないのがちょっと面倒ですが、2割くらい返ってくるらしいので大きいです。一店で一度に155ユーロ以上買い物をすると、このシステムが使えます。現金で買う場合とカードの場合とではちょっと書類が違います。でも、フィレンツェでは観光客が多いせいかどこもお店側がよくわかっていてスムーズにできます。帰りの空港で書類を出します。空港の専用ポストに投函すれば口座に振り込まれる仕組みです。私たちは帰国時のヴェネチアで出すのを忘れて帰ってきましたが、日本の郵便局からわずかな切手代で送れました。
買い物の合間に飲み物やスナックを買ったり、ジェラートを舐めたり。とにかくめちゃくちゃな暑さなので、水分補給が欠かせません。でも、汗はそれほど感じないのです。即座に蒸発してしまうほどの乾燥度なのでしょうか。ポンテヴェッキオのあたりで買ったジェラートはとっても大きくて、二人で一つ食べるのがやっとというくらいだったのですが、ふと周りを見ると、ひとりでその大きなジェラートを舐めてる人も多くて、やはり身体の大きさの違いかなぁと見てしまいました。

お昼をしっかり食べて街を歩きながら何やかや口にしたので、お夕食は買ってきたサンドイッチやデニッシュで軽く済ませて、7時にホテルを出てサン・ジミニャーノへ向かいます。フィレンツェから南西の山の方へ車で小1時間。丘陵地帯にある小さな城郭都市で、入り口の門で車を降りるとウンブリア平原を見渡すことができます。中にはホテルも2,3あって、高原リゾートという感じです。城郭内は車は入れません。
この街は世界遺産にも登録されていて、中世そのままの街並みが保存されています。13世紀頃にできた街だそうですが、政争の果てに忘れられて名残の塔だけがかつての栄華を偲ばせるという感じです。塔の町と呼ばれ、昔の富と権力を数多くの塔が物語っているのです。
徒歩で城郭内に入っていくとさすがに古い石造りの建築物が並んでいて圧巻です。ちょっと中世のお姫様気分。(^^) 
まずはオペラの会場になっているドゥオーモ広場へ。ドゥオーモ(大聖堂)があるのでそう呼ばれているようですが、ここの大聖堂はミラノやフィレンツェのに比べると比較的小ぶりで素朴な感じです。広場は7つの塔に囲まれています。ドゥオーモに対面する舞台のセットはほぼ組みあがっています。
舞台の後はポデスタ宮殿で、その内部に入って階段を上っていくと楽屋になっていました。折りしも岡崎さんはメイク中。中世の宮殿でメイクしてもらうなんて、それだけでもすてきですね。衣裳をつけ終わった歌手達が声をかけながら通り過ぎていきます。うん、チームワークもうまくいっている感じ。(^^)
私たちは開演までにすぐ横のスチテルナ広場のレストランへ。開演は夜の9時半ですから深夜までかかるため、途中でお腹が空きそうだったので。軽くパニーニを食べておきます。いろいろなパンにハムやチーズなどの具をはさんで焼いた、ホットサンドのようなものです。山地なので下界のフィレンツェよりは涼しく、温かいパニーニがおいしかったです。

早めにドゥオーモ脇階段の席に着くと、椅子席よりも風が通って涼しいことがわかりました。私は上背がないので、平坦な場所よりずっと見やすいということもあります。
次々つめかけてくる観客を見ていると、なんとカトリックのシスター達も修道服のまま連れ立って来ています。一瞬、まずいんじゃないかなぁ、筋書き変えたほうが・・・、なんて思ってしまいました。(^^;) キリスト教に改宗した蝶々さんが男に裏切られて最後は自殺なんて、ねえ。でも、きっとピンカートンは新教の方だったでしょうから、まあいいか・・・
日本人らしきお客様も数十人見かけました。


  
開演前の楽屋にて。左はヘアメイクさん。     開演前の舞台遠景。後に宮殿と塔が。



トスカーナ音楽祭 『蝶々夫人』

蝶々さん    岡崎他加子 Takako Okazaki Massaro
ピンカートン  Rubens Pelizzari
スズキ     Daniela Ruzza
シャープレス 
Venzeslav Anastassov
ケイト      Nicolina Stoiano
ゴロー     Giorgio Tiboni
ボンゾ     Peter Buchkov
指揮者     Nayden Todorov.



陽もすっかり落ちた午後9時半、十四夜の月が天空にかかり、7つの塔が異国のドラマを見守る中、いよいよ開演です。
例によって、舞台装置や衣裳は日本人の感覚では少しおかしいところもあったのですが、イタリアでの野外公演ですから、あまり文句は言えません。障子を衝立のように奥に並べたシンプルな舞台です。この障子は、各地の舞台に合わせて幅を調節できるのがミソだと思います。
下の写真で見てもらうとわかるのですが、舞台中央に置かれた仏像が大きいですね〜。この仏像は、道具方さんが出来上がった物をレオノ−ラ様のところに持ってきて、「これでいいか?」と聞いたのですが、レオノ−ラ様はお優しいので、せっかく苦労して作った仏像にダメを出せなかったのだそうです。(^^;) 今年、トスカ−ナ地方では、「日本では大きな仏像が各家庭に鎮座している」という誤解が蔓延していることでしょう・・・(笑)
ゴローと子供の衣裳も何だかおかしいです。ゴローは普通よく扇子を持っているのですが、この公演ではなぜか棒を持っていました。
ゴローは袴ではなくエプロンドレスのような裃風(?)ですし、子供の衣裳はお坊さんのミニチュア・・・
でも、これでもずいぶんマシな方なのだそうです。(^^;)

さて、岡崎他加子さんの歌唱を私が褒めても信憑性がないでしょうから、ボードのはづき様の公演評に譲ります。サン・ジミニャーノでこの日の公演をお聴きになった方のご感想です。
  オペラ・ティールーム5  (「はづき」で検索できます。)
私も、充分なスケールと細やかな表現、無理のない伸びやかな発声だったと思います。
ピンカートンはなかなかの美声なのですが、ややミスが多かったような気もします。スズキは強い表現も無理なく歌えるしっかりしたメゾでした。シャープレスは声も見た目もいかにもシャープレスらしい感じ。オケも悪くないし、ロケーションのおかげで何となくロマンチックな雰囲気もかもし出されます。
休憩は1幕後の1回だけ。後は一気呵成に悲劇へとなだれ込んでいきます。
カーテンコールでは、もうブラヴォーと拍手の海。大成功でした。


  
 『蝶々夫人』終演後のカーテンコール                同じくカーテンコール     
左からゴロー、スズキ、ピンカートン、蝶々さん、仏像、シャープレス        右二人は子役と指揮者       


終演後お客様もほぼ退けてから、舞台の上で出演者一同が記念写真を撮り、さっとメイクを落としたら三々五々散っていくだけ。
野外劇場の終演後はあっけないほどあっさりしたものです。まあ、夜中の零時を過ぎているのですから当たり前と言えば当たり前なのですが・・・
岡崎様ご夫婦はそれから夜の高速道路を走ってパドヴァのご自宅まで帰られ、私たちはフィレンツェへ戻りました。しかし、夜中の1時頃にホテルに着くと、ホテルの扉が閉まっていて慌てることしばし。ドア脇にチャイムを見つけて開けてもらえてホッとしました。(^^;)
翌日はパドヴァへ移動なのでさっさと寝ようと思いつつ、オペラの感激が冷めやらずついつい主人と話し込んでいました。


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