ともえのイタリア旅行(2003年夏)…第2日目
ヴェローナ



この日はゆっくりミラノのホテルでブランチを楽しみました。ビュッフェスタイルですが、飲み物はポットでテーブルに来、カフェラテがおいしい。ミルクは軽く泡立てられていました。ハム、チーズ、果物が豊富。
お昼頃からミラノ〜ヴェロ−ナ間の移動。車で約1時間。この日も晴れて暑い日で、気温はゆうに35℃を越え40℃に近づきつつあります。

ホテル・アッカデミアは、マリア・カラスがヴェロ−ナ野外劇場での『ジョコンダ』でイタリアデビュ−した時に滞在したホテル。
このヴェローナでカラスはメネギ−ニと出会い、セラフィンに認められることになったのです。
ホテル・アッカデミアは最高ランクのホテルではないけれど、実はこの旅行中最も気に入ったホテルでした。
この階段をカラスが歩いた、この絨毯をカラスが踏んづけた、なんて考えると、もう、それだけでぼうっとしちゃうのです。(笑)
年代を感じさせる石造りで、比較的こじんまりしたホテルです。劇場まで歩いて数分という近さ。野外劇場に面したブラ広場からエルベ広場に至るメインストリート、マッツィーニ通りから辻ひとつ入ったところにあります。

予定よりも少し早く到着したので、お部屋の用意ができるまで奥のロビーでウェルカム・ドリンクを頂きながら、他の数組のお客様と一緒にしばらく待ちました。


    
ホテルのフロント前と奥のロビー。      2階へ続く階段             玄関脇ロビー



部屋に落ち着いてから、まずはすぐに予約しておいたアレーナのチケットを引き取りに行きました。近いから楽々。(^^) アレーナの正面入り口に向かって小路を左へ曲がるとすぐにチケットオフィスがあり、そこでチケットを受け取ります。念のため予約確認書をプリントアウトして持って行くと安心ですね。
これで、あとはその夜の『アイーダ』を見に行くだけになったので、もう安心とばかり街歩き。
ブラ広場からもと来た道をエルベ広場に向かって行きました。ジェラート屋さんでジェラートを買って二人で舐めながら歩くと、いかにもイタリアに来たなぁ、という感じ。だって、日本で物を食べながら歩くなんて考えられないのですもの。イタリアでは背広を着た紳士が平気でジェラート舐めながら歩いてるんです。

ホテルの辻を通り過ぎてしばらく行くとUPIMという百貨店があります。パジャマを持ってこなかったので、そこで二人のパジャマなどを買いました。サイズが日本とは表示が違いますが、売り場にはS,M,L の目安も出ていてわかりやすく簡単。でも、日本の物より少し大きめ。ついでに孫の普段着もたくさん買いました。日本にはないような色やデザインがうれしいです。ちょうど、半額セールだったのも。今年の夏は不況で売れ行きが悪かったために、セール期間を延長していたのだそうです。
それから、オペラは9時から始まるので、その前に夕食をすませるためのレストランを確認しに行っておきました。
マッツィーニ通りのUPIMから斜め向いの小道がすぐ突き当たりになっていて、そこがお目当てのレストラングレッピアGREPPIAのテラス席。左手前にはレストランの屋内に入る扉も見えます。PM6:00開店との張り紙を確認して、ちょっとエルベ広場の方へ。


  
レストランGREPPIA。この左手前がテラス席。               エルベ広場のカフェ


一度、ホテルに帰って一休みし、6時の開店時間に合わせてレストランへ。
まず、生ビールを頼み、前菜にLardo(豚三枚肉の塩漬け)の薄切り+アツアツのポレンタがお薦め(ポレンタ=とうもろこしの細挽を煮た物。トロトロのマッシュポテトに似た感じ)。ポークチャップがフォークでホロホロ崩せるほど柔らかく、ラムの炭火焼きはボリュームに驚くけど、意外と口当たり良く食べられました。ここまでは1皿づつ取って半分こ。パスタは三種盛りのTrisを。これだけ食べるともうお腹いっぱいで、デザートは軽く1皿だけ。私はティラミスを。

一旦ホテルに帰って身支度をしてから、いよいよアレーナへ。
ブラ広場まで来ると、アレーナ入り口脇に騎馬警官が2人。珍しそうに観光客が寄っていっては写真を撮っています。
私たちは1階平土間席なので正面入り口を入ると、バーとトイレが右側に。係員たちは皆お仕着せの正装。そこからゲートをくぐったところに、プログラムや記念品を売っているカウンターがあります。
座席は前の方なので中央通路を通っていくと、飲み物売りや座布団貸し屋が声をかけてきます。平土間と2階席はクッション付きシートなので、本来座布団はいらないのですが、私たちは借りてしまいました。席について座布団を敷くと、悲しいことに私の足が地面につかない・・・そこで、仕方がないので背あてクッションとして利用すると、これが意外と具合がいいのです。2階席より安い席は内壁に沿って階段状になった石造りの席で、そこはクッションがよく売れそうです。そのあたりでは火をつけたロウソクを持っている人が多いです。いかにも野外劇場という感じがします。
平土間の席から周りを眺めると、劇場は圧倒されそうな大きさです。総収容人数は2万人を越えるとか。
開演前のざわざわとした雰囲気もなかなか。周りの着ているものを眺めてみると、平土間中央前方ではかなり派手な肩のあいたドレスも散見されますが、この日はあまりにも暑かったせいもあるのか、ぴったり身に貼りつくドレスは少なくややカジュアルな感じ。2階席から外野の自由席のほうは、相当くだけた格好でもOKのようです。
舞台は既にしつらえられて、中央に木材を組み上げて作った大きなピラミッドが鎮座し、背後の階段状のアレーナ壁面にもあちこちに像が立っています。とんでもなく広く大きな舞台です。
9時近くになると流石に空も暗くなってきて、やがてオペラ『アイーダ』の始まりです。

【この日のキャスト】
アイーダ  フィオレンツィア・チェドリンス
ラダメス  サルヴァトーレ・リチトラ
アムネリス  ラリッサ・ディアドコヴァ
ランフィス  カルロ・ストリゥリ
アモナズロ  アレクサンドリュー・アガケ
指揮     ダニエル・オーレン
演出     フランコ・ゼッフィレッリ


 
アレーナ前の騎馬警官。                           『アイーダ』の凱旋の場



普段はこのオペラ、アイーダよりもアムネリスのほうが気になって見ているのですが、この日はなんといってもチェドリンス。しかも、この1週間前に私は東京で彼女が『ノルマ』を歌うのを聴いて、予想通りとても気に入ってしまっていたのです。近年、こういう重い役にも挑戦するようになってきていますが、ドラマチックな声の張りよりも、弱声をうまく使った感情表現のきめ細かさを武器にしています。
リチトラは前のスカラ座来日公演のときにファンになってしまったのですが、この人も伸びやかな美声を持っています。
アムネリス役のディアドコヴァは初めて聴いたのですが、まずまず健闘していました。(アムネリスには厳しい私・・・)
オーレンはいつも通りユダヤの帽子をかぶっていましたが、この日は黒の帽子でした。手堅い指揮をします。

オペラが始まる前に2,3回、巫女の一人でしょうか銅鑼を持って出てきます。銅鑼をなでるようにシャラシャラと打って開演間近と告げるのです。観客はそれにも歓声と拍手を送ります。
1幕が始まっても何だか周りのザワザワがなくならないのはヴェローナらしいと言えば言えるのですが、生真面目な日本の聴衆は気に入らないかもしれません。平土間は半分社交場なのですよね。写真も演奏が始まっていても、みんな平気でフラッシュ焚いて写しています。音が飛んでこないのも、音響管理のしっかりした屋内の劇場とは違うところ。でも、それだけに生の声の輪郭がはっきりわかってしまうのです。歌手にとっては声量のことだけでなく、恐ろしい劇場でしょう。
1幕はまだみんなエンジンがかかりきっていないなという感じですが、イタリアのオペラではよくあることで、ペース配分の問題だという声もあります。

さて、問題は1幕後の休憩時間にやってきました。入場引換券をもらってブラ広場に出てジェラート・パフェを頼み、やっとありつけたジェラートにむしゃぶりついてまもなく・・・何と、劇場の方から拍手の音が聞こえるではありませんか!
まだ3分の1も食べていないジェラートを放り出して(1つ10ユーロくらいもしたのに・・・)、とにかく大急ぎでゲートへ。
・・・でも、間に合わなかったのです。それでも何とか見られないかと頼んでいると(実はもう英語なんか出てこなかったけど)、親切な係員が外野席のはずれのてっぺん近くでなら見られると言って、その場所まで案内してくれました。
暗い石造りの内部階段を上がっていくと、下手側の舞台の真横の階段席の高い位置に出ました。でも、そこは、実に面白い場所だと言うことがすぐにわかりました。まず、音は平土間中央部よりずっといいのです。なるほど、音は上に上がっていくというのは本当だったんだと納得。舞台はすぐ横でも高さがあるので遠いけど、スワロフスキーの双眼鏡を持ってきたから大丈夫。(^^) なにより、そこの住人たちはビールをケースで持ち込んで、野球観戦でもするような感じで盛り上がってるではありませんか! 半パン、Tシャツで石の階段に腰掛けて。その上、舞台の真横なので、出演者たちが出てくるトンネルのような所もしっかり見えます。舞台に出る直前の歌手やダンサーの緊張した顔や、互いにつつきあってふざけてみせる兵士たち、衣裳を引っ張って直しているダンサーたち、そして、舞台に出て行っても端っこの方で大きな旗(?)を支えてるだけの役で退屈したのか、その旗の竿をさっと放してはつかまえて遊んでいる女性たち・・・etc. それに、柵一つ隔てたところにトランペット奏者や巫女が立っているのですよ! 階段壁もいっぱいに使って上演するので、外野席と舞台エリアが隣り合うことになるのです。
舞台の向こう3分の1は見えないけど、こんな面白いものめったに見られないわ〜(^^)
ヴェローナはどの席でもそれなりの良さがあるみたいです。
3幕からはまた元の平土間に戻って残りを見ました(だってもったいないんですもの)。お隣のオーストリアから来たという若い夫婦が、2幕はどうしてたの?と話しかけてきたので、いろいろ教えてあげました。

終演後、劇場を出るとまだブラ広場のカフェは開いていて、たくさんの人がそこでまた飲んだり食べたりしていました。タフですね〜
でも、終演後すぐに飛び出していった人がタクシーに乗ったら、次以降のグループはそのタクシーが帰ってくるまでホテルへの足がないのですよね・・・その暇つぶしかな。ヴェローナの有名な大ホテルはほとんど郊外にあるので、帰りのタクシーを予約しておかないと帰れないのです。ツァー客はまとめてバスを仕立ててということもあるそうですが。
私たちのホテルは歩いて5分と言うのがとても便利でした。帰りの道もまだお店がたくさん開いていて、明るくて人通りも多かったので安心でした。
9時に始まった『アイーダ』が終わって、ホテルに帰ったのはそれでも夜中の1時でした。



旅の目次に戻る   第3日目へ