第三幕:トスカの身投げでのハプニング  


これもハプニングの多い場面です。
追われて城壁の階段を駆け上がるところはいつもハラハラさせられます。
肥ったソプラノがよたよたと登っていくのを見ると、すぐに追い付かれそうに見えるのですが、いまだ捕まってしまって飛び下りられなかった歌手は見たことがありません。
いろいろな演出があるところですが、追い縋る追っ手に間一髪、着ていたマントを投げつけて、そのすきに駆け登って身を投げたカラスの絶妙の間合いが映像に記録されていないのが残念です。

 


●1979年、東京でのカバリエの『トスカ』。
カレーラス、ヴィクセルが共演したこの『トスカ』、ご覧になった方もあるでしょう。
ハプニングと言うには当たらないのですが・・・
カバリエおばちゃまの体重計はこのころ既に特製品に替わっていたはずです。
(いや、彼女のことだから計ってみる気さえなかったかも)
終幕、階段を登る場面、悠揚迫らぬご様子で登り詰めたと思ったら、
なんと飛び下りるはずのトスカはそのままひょいと城壁の縁を越えて向うへいってしゃがんだだけ。


●トスカが身投げしたらトランポリンがあって、、、巨体のトスカがポーン、ポーン!
さんざんわめき散らしながら・・・
裏方さんの仕業だったようですが、一体どんな恨みをかったのやら・・・
このシーズン、二度とそこへは出られなかったでしょう。
1960年、ニューヨークでのことだという説もありますが、この話にはいろんな場所があって、それぞれの都市で生まれた伝説の一種でしょうか。


●1961年、サンフランシスコにて。
銃殺隊がカヴァラドッシではなくトスカを撃って、あげくにトスカに続いて次々身投げ。(!)
こんなことが起こるなんて信じられないように思いますが、有名な話です。
オペラの舞台裏は予定が狂って時間に追われ、修羅場になっていることも多いので、
エキストラの銃殺隊にちゃんとした詳しい指示が与えられなかったのです。

「並んで出ていって、あの仕官が合図したら撃つ。それだけさ。」
「退場?・・・主役と一緒に帰ってこい。(幕が降りたら)」
『トスカ』の筋立てなんてまったく聞いたこともない大学生達が、
舞台上でこれをどう解釈したか・・・

  ◎撃つってどっちを?二人いるじゃないか!
     ⇒トスカは隠れているようにも見えるから、諦めて立ってるカヴァラドッシを撃つのかな?
  ◎えっ、あの男ちらちらと意味ありげにトスカさんを見てるぞ(実は演技のうち)
     ⇒あっちを撃てってことか! OK、OK!(銃をトスカに向ける)
  ◎私じゃないとトスカは否定
     ⇒手を振り回して必死になってるぞ。撃たれたくない(それは事実)って演技だろう。バン!
  ◎しまった!間違いだ!男のほうが倒れたぞ。
     ⇒まあいいや、さっさと退場しちゃおう。
  ◎えっ、主役はあんなとこから退場したぞ
     ⇒いいのかなぁ?とにかく一緒に飛び下りよう。続けー!(幕、幕!)

こういう風に再構成してみると、エキストラ達の考えのほうが納得できませんか?(笑)
尚、コミック「動物のお医者さん」にもトスカを撃ってしまった大学生エキストラの話が出ているそうです。

  

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